日記,  認知症

認知症日記-9/44 [2018/7/20] MRIを取るために結局大病院へ


★事実を正確に伝える為には本来ならば総てあからさまに書きたいところであるが、お世話になった介護関係者の方々や近隣の方々の個人情報の問題もあるので固有名詞は架空のものにせざるを得ない箇所があることを最初にお断りしておきます。


1. 2019/7/14〜7/19

  K病院の先生の問診では認知症なのかどうか全くわからなかった。
年寄りの扱いにも慣れている優しそうな医者ではあった。
 内科が専門医で、救急医の経験も豊富なので総合的に話を聞いてもらうにはいいのかもしれなかった。

 7/20の検査の日までは毎日、何度も京都からの様子を思い出していた。
東京でも大雨の予報は出ていたのに、晴雨兼用の薄い傘で来た
・サンダル履きで来た
・皆んなの携帯を鳴らした洪水警報のアラームに反応が薄かった
・一緒に京都に来ている嫁に「今日も(東京で)仕事なの?」と聞いた
・たっぷり休んだ後、400mしか歩いていないのに「疲れた」と言って、お寺さんの休憩室にへたり込んだ

・東京の家の鍵を失くした
・「家に入れるのか?」というyesかnoしかない質問に「わからない」としか答えなかった
・どこかに合鍵を置いてある、とか
どこかの扉はちょっとしたコツで開く、とか
の秘訣があるから入れる
 お隣のYさんのお宅に泊めてもらうから大丈夫、とか
 鍵がないから入れない。だからあんた達のマンションに泊めて、とか
何らかの答えが全然なく、「わからない」は自分があの晩どうするつもりだったのか、不安が伝わってこなかった
・2時間で同じ話を10回以上繰り返した

・「あたし、認知症かね」と軽い調子で何度も言った
・鍵を失くしたからSECOMの防犯ブザーが鳴りっ放しになってSECOMさんに来てもらったことを覚えていなかった
・スペアキーを作ろうって約束した日に鍵屋さんを勝手に呼んでいた

・新たな鍵穴をつけたのに何度も古い鍵穴に新しい鍵を差し込んで開けようとしていた

 認知症に関係あるのかどうかは分からないけれど、いろいろな場面が繰り返し思い出された。
 はっきりしているのは、まともな普通の会話がだんだん出来なくなっていたことだった。
 我々が話す文章は「一単語」をモットーとしなくてはならない。
文章が長く続けば、最初だけ、か、最後だけしか聞こえていないようだった

 ずっと難聴のせいだと思っていたのだけれど、認知症のせいなのだろうか

「弟も来るってさ」
Z病院受診の紹介状を持たされたから、7/20の午前に行くとメールすると、
弟も合流すると返信が来た。
「え、会社を休んで?」
「代休なのか、分からんけど、まぁそうそうあることじゃないからな」

これから一年間、ほぼ毎週のように代休、有給休暇を駆使しながら家族が毎週のように何かしら対応せざるを得ない状況になるなんて、考えてもみなかった。
 

2. 2019/7/20、やっとZ病院へ

 先週の様子だと、Z病院の建物に入るだけで揉めるだろうなぁ。
「あたしはどこも悪くない」
「あたしはO病院に行ってるの」
 そこで糖尿病の薬を始め9種類も処方されているという自覚がないじゃないか。
「O病院ではたくさんの薬が出てるよ」
「あらそうなの」
って、毎日飲んでんでしょうが。
「先生から注意すること言われてないの」
「え?」
「気をつけなさい、って言われてない?なんか」
「何にも言われてないよ」
 もう話をしても会話になる状態じゃなかった。
ちゃんとした会話が続かない

 子供の頃から街一番の大病院。
何度か来た。
 父も母自身も祖父母も私も弟も。
それでも何度か「Z病院はヤブだから」とここを嫌っていた。

 知ってる病院だから余計に抵抗するんだろうなぁ。
歩いても歩ける距離ではあるものの、母の遅い歩みでは最早そうそう楽じゃない。
 車に乗せて、向かう。
弟とは病院で待ち合わせ。
千葉から来るからさすがに朝一は厳しい。
どうせ何時間も待たされるから、適当に、と言ってあった。
 朝一、駐車場がすでに満車だ。
私は駐車場へ入庫待ちの列に並ぶから車から降りられない。
 妻に機嫌が良くない母を託し、建物に向かわせる。
何十年も来ていないだろうし、脳神経科は初診だったから、一刻も早く手続きをしないといったい帰りは何時になることやら。

 幸いなことに駐車場警備のおじさんが、身障者用のスペースに停めていいから、と気を利かせてくれた。
 何十分も待たされるかと思いきや、機転を利かせてもらったお陰で15分くらいの待ち時間で入庫できた。

 母は実の息子の俺たちに言いにくいことを嫁にズケズケ言う。
「あたしはどこも悪くないのに、こんなところに連れてきて」
きっとずっと言い続けていることだろう。
 15分でも言い続けられたら、嫁の立場ではそうそう気軽に無視したり出来ないだろう。
 「黙って言うこと聞きな」とも言えないだろう。

 初診なので、また問診票に記入し、血液検査とか血圧とか初歩的な検査をまたやられた。
 すっかり母の問診票を書くのが私の役目になってしまった。
しかし自分の問診票を息子とはいえ自分が書かないことにクレームをつけてこないのも考えてみたらおかしな話だった。

 脳神経科は血液検査、血圧の場所と違う階にあった。
ずらりと診察室が横に並び、けっこうな数の人が待っている。
 壁にパネルが掲げられ、いま診察室で受診している人の番号、次に呼ばれる番号が表示されている。
 銀行か、ここは。
さすが大病院。
 我々が待てと言われた診察室に医師の名前が表示されている。
確かに紹介状にあった名前だ。
キョロキョロしていた母の顔に不審な感じがよぎった。
「あたしはなんでこんなところにいるの」
そう聞きたいんじゃない?
 でも聞かないでくれ。
うまく言えないよ。
 認知症かも、って言っても、絶対に否定するでしょ。
 京都では自分の口で言ってたけどね。


 母に付与された番号よりも大きな数字が別の診療室に表示され、その番号を付与された人が吸い込まれていく。
 どうも我々が紹介された先生の部屋は回転が遅い。
スーパーのレジに連なった列の遅いところを選んでしまって、他の列ばかりが進みが良いと恨む気持ちと同じだった。
 もう初診受付からすでに1時間は経っていた。

 今回はあらかじめ並ぶべく列は指定されているからレジ打ちが遅い店員なのか、複雑な買い物をした客が先客にいたのか、とくだらないことを考えでもしないととても待っていられない。

 弟が到着した。
弟が来たことに母が予想以上に驚いた顔を見せた。

 急に私の袖を引っ張った。
母が立ち上がった。
「あたしをボケ老人扱いする気なの!?
え?
周囲の順番待ちの人たちにも十分聞こえる声だった。
「あたしをキチガイ扱いかい!?
おいおい、それは違うでしょ。
脳神経科との掲示の前で、周囲の目もあるし、うまい説明の仕方も浮かばず、
「大人しくして。座りな」と腕を取って座らせようとするが、
見たこともない強張った顔と強情さで座ろうとしない。
勝手に入院させる気なの!私は帰ります!」と完全に怒り出す始末。
キチガイ、入院は完全なる独り善がりの誤解だった。
 昔は認知症を「痴呆症」と呼んだ。
いま、その呼称は廃止されているけれど、「認知症=ボケ」と刷り込まれた時代の思い込みに、精神病と入院が勝手に付け加えられて、私自身初めて見る鬼の形相だった。

 私はとにかく静まらせようと、後ろに回って肩から座らせようとし、弟も腕を取った。
 あまりの剣幕にとっさの行動を取れなかった私の嫁が、母のその鬼の形相を直視してしまった。
 いまでも言う。
「あの時のお義母さんの顔を思い出すと、怖くて怖くて。
あんな顔で何か言われたら。何も言い返せなくなる」
 私は横顔と言いかたの剣幕が聞いたことがない調子だということを受け止めたが、鬼の顔を正面から見なかったので、嫁の回顧を何度も聞かされた。

「ボケ」

「頭がおかしい」

「入院」

と勝手な三段論法を思ってしまい。
突然の激昂だった。
 それは弟までが会社を休んで家族全員が集合したことで、急速に自分の身に何か歓迎しないことが襲来すると解釈したようだった。
 だったら先週から何度か会社を休んで来ている私だけならいいのか?
変な理屈だ。
 まぁ、しかし全員揃ったから非常事態を発想を飛躍させたのは母の脳みそなので文句をつけても仕方がない。

「入院なんかさせないから」
「とにかく、落ち着いて」
「静かに」

「帰ります」と啖呵を切ったくせに歩き出すでもない母はやっと座った。
まだ機嫌は最悪のまま。

「大丈夫ですか」
看護師さんがやって来た。
遅いよ。
「いえ、大丈夫です。ご迷惑お掛けしてすみません」
「いえいえ。もう少しですからね」
母に向けて優しく言ってくれる看護師さん。
いや、早い遅いも問題じゃないんで・・・

 とにもかくにも、われわれは身体を心配しているだけなんで、一回ちゃんと検査を受けるだけだ、と静かに話すと、少し母の機嫌も直った。
 なんの検査か、は説明できなかったにしても。

 やっと呼ばれた。街で一番大きな病院でも紹介状を書いてくれた脳神経科の先生は週に一度金曜日にしかここに来ない。
だからなのか、その先生目当ての患者が多いのか、相当待たされた。

 紹介状を開いて読んでいる。
問診票に書いた経緯も読んでいる。
読み終わった。
 眼鏡をかけた、大人しそうな先生だ。

3. え?今日検査は出来ないってどういうこと?

「それでは、検査をしなくてはなりませんので、MRIの予約を入れてもらいましょうか」
 はぁ?

「は?え?今日はMRI撮ってくれないんですか?」
その為に紹介状もらって来てんだから、今日撮ってくれると思うだろ。
今日は単なる問診?
そのために3時間近く待ったわけ?

「はぁ、申し訳ないのですが、MRIは予約が詰まっていまして、今日すぐというわけにはいかないので・・・」

「いつなら取れるんですか?」
「いつがよろしいですか?」
「一日も早くお願いします」
私の返事はほとんど食い気味だったはずだ。

「最短で7/24になりますが」
「じゃあ、その日で」
もう、曜日の確認もしていないし、嫁と弟の都合なんか聞かなかった。
私が何日会社を休もうが、とにかく早く診断してもらわんと!
「じゃあ、その7/24に結果は分かるんですよね」

「申し訳無いのですが、私の勤務が毎週金曜日だけなので、上がってきた画像診断をするのが早くて来週の7/27になってしまうのですが」

はぁ?
つくづく、本当に申し訳ない、よ。
この医者は。
私の顔が鬼になるぞ、しまいには。
「じゃあ、今日は無駄足で、別の日にMRI撮って貰って、また別の金曜にここに来なきゃわからないってことですか?」

明らかに私の言い方が強くなった。と思う。

「ええ、申し訳無いのですが」

思ってないでしょ。
それはそちらの段取りだし。

母は鬼になるし、問診だけだし・・・
とぼとぼと揃った家族で胸の痞えが下りないまま食事に行ったとさ

(手尾広遠)


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